栽培方法の種類とは?農家が徹底解説!無農薬や有機栽培、違いは…
近年、ものの値段が歯止めなく上昇し、お野菜やお米もその影響を大きく受けています。また、食の安全についても色々な情報が出回り、安心できる作物を「自分で栽培してみたい」と感じている方も多いはずです。
では、どの栽培方法が自分の理想に近いのか?どの栽培方法だと実践可能か?という疑問に辿り着くと思います。
ここで紹介する栽培方法は、あくまでも客観的・法的に分類された名称であり、栽培者の裁量により表現が若干違ってくる場合もあります。詳細は農家さんへ直接尋ねて、こだわりや理念を聞き出すとよいかもしれません。
それでは、栽培方法の種類とその説明、特徴などを解説していきます。
栽培方法の種類とは?4選!
栽培方法には、作物や土・環境に対する考え方の違いや事業の目的によって分類される方法と、
作物が栽培される場所によって分類されます。次に挙げる栽培方法は、前者による分類です。
慣行栽培
日本国内はもちろん、世界中で広く一般的に行われている農法です。
農薬(除草剤含む)・化学肥料を施し、
目標とする品質や収量を達成するために選ばれる栽培方法。
法的な定義はされていませんが、「有機栽培」や「特別栽培」と区別するために、
この名称が用いられます。
農薬取締法において、「農薬使用基準」として農薬の使用量や濃度、
対象農作物などが定められており、
遵守が義務付けられています。
また、植物の根が直接吸収できる化学肥料を施すことにより、
安定的で高収量の栽培ができることが特徴です。
特別栽培
上記の慣行栽培に比べ、農薬や化学肥料の使用を低減した栽培方法で、その方法で栽培さ
れた農産物は「特別栽培農産物」として農林水産省が以下のように定義しています。
「地域の慣行レベルに比べて、節減対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分
量が50%以下、で栽培された農産物」
「地域の慣行レベル」とは、各県が設定している作物ごとの農薬使用回数のこと。宮崎県
の場合、米22回や、いちご60回など、そもそもの使用回数が多く、使用を低減しても個人
的には不安に感じてしまいます。
対象農薬に限らず、全ての化学農薬および化学肥料不使用であれば、後述の有機栽培の条
件を一部満たすことになります。
特別栽培農作物の表示を見かけた際は、何をどれだけ施しているのか、販売店や栽培者に
尋ねてみるといいでしょう。
有機栽培(有機農法と同義)
有機農法とは、「有機農業推進法」において、以下のように定義されています。
1)化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと
2)遺伝子組換え技術を利用しないこと
3)農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる
農業
有機農法を実践されている農家さんの中には、農薬として定義されているものは一切使用
しない場合もあれば、生物由来の農薬を使用する場合もあります。「化学的に合成された
」ものを土に施さなければ、有機農法の定義からは外れません。
また、「有機農法であっても有機野菜でない」という場合が多々あります。これは、有機
JAS認証を受けた畑で栽培された作物のみが「有機野菜」と表示できる、という法律がある
ためです。一般的には浸透していないのですが、ここで確認しておきましょう。
自然栽培
自然栽培は、自然栽培全国普及会や自然栽培協会などがそれぞれ定義しています。農薬は
もちろんのこと肥料さえも施さないという栽培方法です。徹底した科学的アプローチによ
り、植物生理はもちろん土壌微生物の働きなどを活かし、植物そして土本来の力だけで栽
培を行います。
また、種についても固定種や在来種を繋いでいくことを意識し、自家採取や育苗を自らの
手で行う方も少なくありません。
これからの持続可能な社会の構築に向け、とても重要な役割を果たす分野だと言えます。
「有機栽培」は無農薬?
「無農薬」という言葉について
ネット上や直売所の商品にも「無農薬」と表示された食品はたくさんあります。残念ながらこ
れらの言葉は法的には定義されていませんし、食品表示としては使用が禁止されています。
※特別栽培農産物に係る表示ガイドライン
「無農薬」という言葉は、一般的に広く流通している言葉ですので会話中や広告等においても
頻繁に目につきますが、食品の「表示」として使える言葉ではありません。
(もどかしいのですが)
実際、一般的な認識で「有機栽培」は「無農薬」と捉えられていることは事実ですし、イメー
ジとしては掴みやすいでしょう。しかし、先述のように食品表示に「無農薬」という言葉は法
律上で禁止されていますので、ここで確認しておきましょう。
どうして「無農薬」と表示してはダメなの?
上記ガイドラインによると、「無農薬」の表示により「土壌残留農薬」や「周辺圃場からの飛
散」が一切無い、といった誤認を防止するためとされています。もちろん、これら二点の影響
が、検出できないほど極めて少ない場合もあると考えられます。しかしその有無にかかわらず
、「無農薬」と表示が消費者の誤認を招いた、という例があったようです。
またこれは私見ですが「無」という証明が、人類の科学力では不可能ということも言えると考
えます。
地球という限られた世界で生活している以上、近隣の畑やさらに離れた畑からの農薬飛散、野
鳥や獣、堆肥に含まれる家畜のえさに使用した農薬など、影響因子は突き詰めると切りがあり
ません。切りがないということはつまり、「無」と言い切れないということではないでしょう
か。農薬成分が技術的に「検出されないほど少ない」ことと「全く無い」ことは、大きく異なります。
食品を表示する言葉は、多くの人に影響するため、曖昧さを極力避けた表現にならざる
を得ないということだと考えられます。
しかし、細かく意味が分かれているがために、逆に誤解や認識不足が生まれやすくなるという
一面も、また事実だと思われます。
栽培場所による栽培方法の種類とは
野菜を育ててみたいと思っても、誰しもが畑を使えるわけではありません。そんな方でも自宅
で、省スペースで野菜作りをする方法もあります。ここでは、栽培場所ごとの栽培方法
・露地栽培(屋外)
・施設栽培(屋外)
・プランター栽培(屋内)
・水耕栽培(屋内)
露地栽培
「露地」とは全くの野外のことで、土で育て見上げれば太陽、といった環境での
栽培方法です。施設費が発生しないのでコストは低いものの、気温の変化はお天気任せ、風雨
や激しい気温の変化にも晒されます。しかし太陽の光をしっかりと浴び、自然により近い環境
下で逞しく育てることができるのが特徴。自宅に少しでもお庭がある方におススメ。
・施設栽培…ビニールハウスと呼ばれる、屋内空間を模した施設内で野菜を育てる栽培方法。
一般的には、アーチ状に湾曲した骨組みにビニールを張り、風雨をしのぎ、また害虫や獣の侵
入を防ぐ効果もあります。工夫次第では温度を一定に保つこともでき、きちんと管理された環
境下で、お好みに合わせた栽培が楽しめます。雨に弱い作物や、温度管理が重要な育苗用施設
として使われることが多く、一般家庭用のコンパクトなビニールハウスも販売されています。
プランター栽培
お庭がなくても、農地を借りなくても、プランターを使えば自宅で簡単にお野菜を育てること
ができます。種まきから収穫まで、目の届く範囲で観察・体験でき、日々の暮らしに癒しと楽
しみを与えてくれます。お野菜には健全に育つための条件があり、栽培に適した時期、根の張
る範囲、日当たりの良し悪し等、様々です。栽培したいお野菜について情報を収集し、プラン
ターのサイズや置き場所など検討することも楽しみの一つです。また、ベランダや屋内など降
雨による灌水がされにくいことから、水やりをしてあげる必要があります。塩素の含まれた水
道水はできるだけ使わず、溜めた雨水や湧水を使用することで作物の根にも優しい環境が整い
、健全なお野菜が育つと考えられます。
水耕栽培
水耕栽培とは、全く土を使わず根からは培養液を吸わせて育てる栽培方法。土を
使わないため屋内栽培に適しており、除草や虫の被害がないことが特徴。主に植物工場などで
データ管理され大量に生産されているが、日光の代わりにLED照明を必要とする場合も多く、培
養液の循環や供給量の管理設備に少々コストがかかることが難点。水耕栽培用のキットも数多
く販売されているので、屋内で手軽に栽培を楽しみたい方にはおススメの方法。
やっぱりおススメの栽培方法は有機栽培!?
これは私自身が実践しているので、有機栽培をおススメするのは必然なのですが。。。栽培自
体を楽しむことはもちろん、作物は我々の体を作ってくれるものですので、できるだけ農薬の
使用は避け、リスクを抑えたいところではあります。まずは作物の栽培に挑戦してみること。
次いで、殺虫剤や除草剤を使わない有機栽培での野菜作りに移行し、安心して食べられるもの
を自分で栽培できる楽しみを味わっていただきたいと思います。そして慣れてきた頃に、種や
環境についてさらに配慮した自然栽培への挑戦も面白いと思います。どのような栽培方法であ
っても難しさがあり、それを経た先に楽しさが待っています。年々上達したり、工夫したりし
ながら、ご自身にあった栽培方法が見つかるといいですね。
まとめ。食は身体や将来への投資!
「私たちは食べたものでできている」こんな言葉をよく聞くようになりました。当たり前のこ
とですが、日本の食は本当に安全なのか、少々疑わしくなっているのが昨今です。安全は科学
的に保障されていますが、それは本当に安全と言えるのでしょうか。
日本の農薬基準、添加物の量、ゲノム編集された動植物。情報にありふれた世の中ではありま
すが、自分や子供たちが口にするものをきちんと選択しリスクを回避することは、誰にでも実
行でき、かつとても重要な投資であると考えられます。
「食の選択は将来への投資」皆様は何に備えますか?